IoTによって様々なメリットが得られる一方で、導入における課題も残されています。いくつかのハードルを乗り越えなければ、介護の現場でIoTを活用することはできません。
大きな課題としてまず挙げられるのが導入費用の高さです。モノとインターネットをつなぐIoT技術を最大限に活かすためには、施設全体がインターネットに対応していなければなりません。加えて、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを揃えるための購入費用も発生します。事実、それだけの費用をすぐに用意できる施設はそこまで多くないというのが現状です。
また、スタッフ全員に共通認識を持たせなければなりません。若い世代のスタッフなら比較的スムーズになじめますが、IT技術に触れる機会の少ない上の世代は扱いに慣れるまで時間を要するでしょう。機器の使用方法だけでなく、使用の目的・目標も含めて共通認識を持っておかなければなりません。導入したIoTを最大限活用するためには、スタッフへの教育も必要です。
さらに、情報漏洩のリスクもあります。介護記録を電子化する際は情報漏洩に十分注意しなければなりません。セキュリティ対策や個人情報の管理に関する教育も行う必要があります。また、センサーやカメラを用いるシステムを導入する際には利用者のプライバシーに対する配慮が求められます。本人だけでなく家族に対しても説明し、同意を得なければなりません。容易に情報共有ができるからこそ、徹底的な管理体制が求められるのです。
IoT導入において最も大きな課題である導入費用の問題を解決する一助として、政府が実施している補助金制度があります。厚生労働省が掲げる「介護業務の効率化」を推し進めるために設置されたのが「ICT導入支援事業」です。介護ソフトやタブレットを導入する際に利用できる補助金です。2020年からはWi-Fi機器や勤怠管理ソフトの購入も助成対象となっています。
介護ロボットを導入する際に利用できるのが「介護ロボット導入支援事業」です。新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえて、更なる拡充も実施されました。利用者の移乗や入浴を支援するロボットや見守りセンサーを搭載した機器を購入する際に補助金が支給されます。
中小企業や自営業を対象とした補助金が「IT導入補助金」です。様々な業種や組織形態に対応していますが、介護分野も対象です。書類作成や勤怠管理、訪問介護におけるスケジュール管理などに利用できるツールを導入する際に利用できます。
IoTを導入することでスタッフの業務負担が大幅に軽減されます。その結果介護の質向上にもつながり、介護サービス利用者とスタッフの双方にメリットが生まれます。また、人材の定着率が上がるため、人材確保を急務としている介護業界にとっても大きなメリットとなります。