介護施設内での巡回見守り・異常時の駆け付け・情報通知などを行う介護ロボットとして注目を集めているのが「SOWAN(ソワン)」です。高山商事とテムザックが2019年に共同開発しました。
老人ホームなどの介護施設は24時間体制での対応が求められます。夜勤時は人員が少ない中で多岐に渡る業務を行う必要があるため、スタッフの業務負担軽減が課題となっています。介護業界全体の人材も不足しており、2025年時点で約38万人もの人材が不足すると予想されています。
そのような状況の中で誕生したのが、自動駆け付け介護ロボットSOWANです。活動量計と連動して利用者のバイタルデータを確認しながら施設内を自動巡回し、必要に応じて部屋に駆け付け、その状況をスタッフに伝えると同時に記録を残します。また、徘徊している利用者を発見した際には個人を認識した上で声がけを行います。
開発段階において高山商事の関連企業が運営する老人ホームで検証を重ね、現場に必要とされる機能を分析し、それをパッケージプランとして売り出すことで低価格化を実現しました。今後はあらゆる介護現場で導入され、スタッフの負担軽減に大いに役立つでしょう。
SOWANの主な機能としてまず挙げられるのが「自動巡回」です。自動車などにも用いられている「LiDAR」という360度全方位センサーを搭載し、あらかじめ定められた時間・場所で障害物を回避しながら自動巡回します。センサーで取得した情報は即座に分析され、自己位置推定や地図作成を可能とします。
また、利用者の腕に装着した活動量計から脈拍などのバイタルデータを取り込み、継続的に見守りを行います。バイタルデータは居室に設置されたタブレットや管理者用端末から確認できるため、異常があればすぐにスタッフへ通知が行きます。また、それと同時にSOWANが利用者の居室に駆け付け、映像の録画を開始します。スタッフはその映像を遠隔で確認し、利用者と通話することも可能です。
自動引き戸開閉装置「ポルテア」も搭載しています。通信によって自動で扉が開閉するため、SOWAN単独での出入りが可能です。普通の引き戸を後付けで簡単に自動ドアにできるだけでなく、通常時は手動の引き戸としても使用できます。
認知症の影響で徘徊行動がある利用者に対しては、居室に戻ってもらうように声がけをするシステムも組み込まれています。事前に登録した利用者の情報を基に、個別に声がけを行います。また、転倒した利用者を発見した際には警報を鳴らし、スタッフに通知します。
なお、SOWANは充電式のロボットですが、電池の残量が減ってきた際には自動で充電スタンドに戻って充電を行います。
IoTを導入することでスタッフの業務負担が大幅に軽減されます。その結果介護の質向上にもつながり、介護サービス利用者とスタッフの双方にメリットが生まれます。また、人材の定着率が上がるため、人材確保を急務としている介護業界にとっても大きなメリットとなります。